経営管理ビザのポイント

行政書士の業務

行政書士の業務は、営業の許認可(建設業、風俗営業、運送業・自動車登録など)、在留資格・VISA、遺言・相続、知的財産権・知的資産、消費者問題、法人設立などに大別されます。このように行政書士の業務は非常に広範囲に渡っているため、一人で全部の範囲をカバーすることは事実上不可能です。そのため、どの行政書士も自らが取り扱う業務の範囲をある程度絞って開業しているのが実体です。

国際業務の特徴

上記の行政書士業務の中でも、在留資格・VISAを扱う業務は国際業務と呼ばれ、他の業務と比べて申請書の書式が簡単だという特徴があります。

例えば、運送業の申請書は書式が厳格で、細部まで記入する内容が詳細に決められています。しかも、申請書の分量が非常に多く、申請書の各項目を埋めるのは大変です。けれどもそれは、きちんと埋めさえすれば良いということでもあります。さらに、書式が細かく規定されているので、そこに恣意的な解釈が入る余地がほとんどありません。そのため、誰が作成しても最終的な仕上がりはほとんど同様になります。、

これと比べると、国際業務の申請書は分量が少なく、記入欄も短くなっています。けれども、この申請書だけを提出すれば済むかというと、そうではありません。実は、申請書の内容を補完する多くの資料の提出が求められるのです。また、申請後に、入国管理局から追加資料を求められることも多々あります。

さらに、これらの補完資料や追加資料の書式には定形がありません。その結果、資料作成の自由度が高くなるため、作成者による違いが資料に反映されやすくなります。つまりそれは、依頼する行政書士の力量によって、審査が通るか否かが左右されやすくなるということでもあります。

経営管理ビザにおいてポイントとなる補完資料

補完資料としては、例えばパスポートや本国における身分証明書の写しなどがありますが、これらはただオリジナルをコピーするだけなので、すぐに用意することができます。しかし、補完資料はのような簡単なものばかりではなく、中には新たに作らなければならないものもあります。

それでも、ビザの種類によっては、比較的作成が容易な補完資料を提出するだけで済むものもあります。しかし、経営管理ビザでは、多くの補完資料を要求されるでなく、作成に手間がかかる資料の提出も求められます。したがって、経営管理ビザはビザの中で最も取得が難しいと言われています。

その作成に手間がかかる資料の中でも、審査通過の成否に直結するのが、事業計画書と資本の形成過程を示す資料です。この2つを外して、審査が通ることは絶対にありません。それゆえ、経営管理ビザではこの2つの資料が最重要と言えますが、事業計画書については長くなるので別途紹介します。したがって、ここでは資本の形成過程を示す資料について解説していきます。

資本の形成過程を示す資料

では、資本の形成過程とは一体何を指すのでしょうか。外国人が日本で会社を設立し、経営するために取得する経営管理ビザにおいては、当然設立する会社の資本金が必要になります。問題は、その資本金がどこから来たのかということです。つまり、資本金の出自が問われるわけです。

例えば、資本金を毎月の給与を貯めた預金から捻出したのであれば話は簡単です。しかし、中国人の場合、なかなかそうはいきません。ちなみに、私のクライアントのほとんどが中国人(台湾人を含む)ですが、日本人と違って、彼らにとって、お金を預金して長く銀行口座に寝かせておくこと一般的ではありません。みんな、稼いだお金をすぐに何らかの投資に回しています。

それ自体は悪くはないのですが、預金口座の記録がないと、資金の流れを客観的に示すことができません。例えば、保有する株式を売って資本金を調達したとします。その場合、売却先との取引について、互いの口座間でお金を移動させた履歴があれば問題ありません。しかし、それ無しで、単に日本に送金したお金の出処は株式売却益だと主張するだけでは、入管は適切な資本形成がなされたと見なしません。したがって、銀行口座を経由しない資金の流れを客観的に示すためには、かなりの工夫が必要です。

また、他者からの借り入れ金を資本金に充当する場合も、貸し手が一人の場合は簡単ですが、貸し手が複数いる場合は、その資金の流れは複雑になります。そのため、それをわかりやすい形に整理して示す必要があります。あるケースでは、貸し手の貸し手まで遡って記載する必要があったので、縦軸に日付、横軸に各人の銀行の口座番号を取ってエクセルで一覧表を作り、資金の流れを時系列に沿ってまとめたものを入管に提出しました。かなり面倒な作業でしたが、その甲斐あって、その申請は追加資料無しで一発で通っています。

資金の流れが重要な理由

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それでは、なぜ資本の形成過程、つまり資本金に至るまでの資金の流れが重要なのでしょうか。入管はその理由をはっきりと示していません。しかし、入管がそれを重視するのはマネーロンダリングを防ぐ目的だと思われます。マネーロンダリング(money laundering)とは、資金洗浄と訳される言葉です。

それは具体的には、麻薬取引や犯罪などの違法な手段で入手したお金を、架空口座や他人名義口座などを利用して転々と移転することでその出所を分からなくして、正当な手段で得たお金のように見せかけることを指します。そして実際、日本で実体のない会社を設立し、その資本金として送金したお金を他の目的に割り当てた事件もあったようです。

中国人のクライアントの中には、日本にたくさん投資をすれば経営管理ビザを容易に取得できると思っていた人もいます。けれども、この考えは完全に間違っています。上記の理由から、投資金額の大きさよりも、投資金の由来の正当性の方が大事です。上でも述べましたが、資本金の由緒正しさの証明をおろそかにして、申請が通ることは絶対にありません。だからこそ、面倒臭くても、この証明の作業は丁寧にやらなければならないのです。

行政書士サービスに関する次回の記事では、経営管理ビザを取得するためのもう一つの肝である、事業計画書について解説していきます。乞うご期待!!

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